一円相
いちえんそう / Ichiensō (Ensō)
一円相(いちえんそう)の意味
意味
筆をひと息に運んで描く、ひとつの円のことです。始まりも終わりもない円は、欠けたところも余るところもない心の本来のすがた、真理そのものを表すとされます。何をどう読み取るかは見る人に委ねられ、言葉にしきれないものを形で示したものともいえます。
出典・由来
中国唐代の禅僧・南陽慧忠が円の図を用いて教えを示したと伝えられ、のちに潙仰宗の仰山慧寂が多くの円相を用いたことで知られます。三祖僧璨の作と伝わる『信心銘』には「円同太虚、無欠無余(円かなること太虚に同じ、欠くることなく余ることなし)」という句があり、円相の心をよく表すものとして引かれます。日本では白隠や仙厓など、江戸時代の禅僧が描いた円相の墨跡が多く残っています。
悩みへの生かし方
仕事でミスをした、人より劣っている気がする。そんなとき私たちは、自分に「足りないもの」ばかりを数えてしまいます。けれど円相は、欠けも余りもない円として、今のあなたがそのままで一つのまとまりであることを静かに示しています。足りない部分を埋めてからでなければ価値がない、ということではないのです。 実際の円相をよく見ると、線がかすれていたり、閉じきらずに隙間があったりするものも少なくありません。完璧にきれいな円でなくても、ひと息で描かれたその円は、それで十分に円です。不安や焦りで「ちゃんとしなければ」と力が入るときは、いびつでも今日の自分の一筆を描けばいい、と思い出してみてください。
今日の小さな実践
紙とペンを用意して、上手く描こうとせず、ひと息でひとつの円を描いてみましょう。描き終えたら、その形を直さずに数秒だけ眺めてみてください。