両忘
りょうぼう / Ryōbō
両忘(りょうぼう)の意味
意味
善と悪、是と非、自分と他人など、対立する二つのどちらにもとらわれず、両方ともに忘れることを言います。どちらかを選んで握りしめるのではなく、比べる心そのものを手放したときに現れる、静かで自由な境地を表します。
出典・由来
古くは『荘子』大宗師篇に「堯を誉めて桀を非とするよりは、両忘してその道に化するに如かず」とあり、聖人と暴君を比べて論じるより、両方を忘れて道と一体になるほうがよい、と説かれています。また宋代の儒者・程明道(程顥)の「定性書」にも、外を否定して内を肯定するより「内外両忘」がよい、という一節があります。禅の世界でもこの言葉は大切にされ、明治時代には今北洪川が在家の人々のための参禅会を「両忘会」と名づけたと伝えられています。
悩みへの生かし方
職場で「あの人が悪い、自分は正しい」と考えはじめると、頭の中で同じ場面が何度も繰り返され、心が休まらなくなります。両忘は、相手を許しなさいとも、自分を責めなさいとも言いません。正しいか間違っているかという物差しを、いったん机の上に置いてみる、という提案です。物差しを置くと、目の前には「今、自分は疲れている」「今日やるべきことがある」という、ただの事実が残ります。 人の評価が気になるときも同じです。褒められれば舞い上がり、けなされれば沈む。その両方から少し離れると、他人の言葉は天気のように過ぎていくものに見えてきます。何かを無理に忘れようとするのではなく、比べることに使っていた力を、目の前の一つのことへ戻していく。それだけで、心には少し余白が生まれます。
今日の小さな実践
頭の中で誰かと自分を比べたり、良い悪いを裁いたりしていると気づいたら、「両方置く」と心の中でつぶやき、ゆっくり一呼吸してみてください。