不識
ふしき / Fushiki
不識(ふしき)の意味
意味
「知らない」「わからない」という意味の言葉です。ただの無知ではなく、「自分とはこういう者だ」と言葉や肩書きで決めつけられない、ありのままのあり方を示すとされます。わからないことを、わからないまま差し出す潔さがこもっています。
出典・由来
『碧巌録』第一則「武帝問達磨」に見える問答が知られています。梁の武帝が達磨に「朕に対する者は誰ぞ(私の前にいるあなたは何者か)」と問うと、達磨は「不識」と答えたと伝えられます。『碧巌録』は雪竇重顕が選んだ古則と頌に、圜悟克勤が評唱を加えた書です。なお、武帝と達磨の会見そのものは史実かどうか疑問視されており、禅の伝承として読まれるのが一般的です。
悩みへの生かし方
職場の面談や自己紹介、SNSのプロフィール。私たちはいつも「あなたは何者か」と問われ、うまく答えられないと焦ります。でも、人は役職や評価や数行の説明に収まるものではありません。「自分のことがよくわからない」と感じるのは、欠けているからではなく、決めつけられないほど広いからかもしれません。 人から誤解されたり、ある一面だけで判断されたりしたときも、この言葉は静かな支えになります。相手が見ている自分も、自分が思っている自分も、どちらも全部ではない。先のことが見通せない不安の中でも、「今はわからない」と認めるところから、かえって落ち着いて一歩を踏み出せることがあります。
今日の小さな実践
今日ひとつ、無理に答えを出さなくていいことを選び、心の中で「今はわからない」と言ってみてください。そのあと、ひと呼吸だけゆっくり吐きます。